
- 826 名前:『あたしの秘密あなたの秘密』《1》 投稿日:03/12/12 03:45 za2Lpyl+
- 目が据わっている。
中央に広げられたポテチとポッキーは違和感がない。しかしつい先日まで女子高生だ
った娘の部屋には、いかくんとビーフジャーキーまでが展開されている。ワンカップ大
関にビールの空き缶がごろごろ。あまりの酒臭さに開けた窓から風がそよぐ。つめたさ
混じる春の風。卒業祝いの二人での宅飲み。春日歩の部屋で。その当人の
目が据わっている。
そのせいかいつものボケ顔が凛として見える。あたし、まだ飲めます。頬が赤い。
けふう。緊張感のないおくびが彼女の口から洩れると、滝野智はその少年のような顔を
二三度振って肩をすくめる。それは友人の酔態に呆れたわけではなく、自分の酔いを少
しでも払おうとする行為だった。いく、いけるまで、いく。それが、あたしの、生き方。
目が据わっている。
「いくぞ、おおさか、ともちゃんは、まけない」
見た目穏やかなお嬢様でおっとりとした美少女、春日歩の第二の名付けは、あぐらをゆ
らゆらさせてワンカップに口をつけ、飲み下せないまままたゆらゆらした。
「こんなんで負けたら、おねぇ様たちに何されるかわからん。テイクアウトか、ソファで
一夜や」
父のウイスキー、ワンフィンガーだけきゅっとあおって、大阪が謎の言葉を吐いた。
もう。
目が据わっている、目が。
「おおさか」
なにともちゃん。勝負だ、勝負。なにー? まだ飲むのん? いや、大人勝負だ。おと
なぁ?
「秘密語っちゃおう、たいかぁ~い。どんどんどん、ぱふぱふぱふぅぅぅぅ」
なにしゃべるの。うむ、ひとに、聞かれたくないでっかい秘密をしゃべっちゃうのだぁ。
質問! 先生、それってやっぱり、えろえろな話ですか? おお~、えろえろよ。
「だからおおさか、窓閉めろ! カーテン閉めろお! 」
「おおーっ」
かくして、夜のお題は出されたのであった。
- 827 名前:『あたしの秘密あなたの秘密』《2》 投稿日:03/12/12 03:50 za2Lpyl+
- 「じゃ、ともちゃんの秘密ってなに? 」
「おお、さっそく、話しちゃうぞ。じつはあたしわあ」
よみが大好きなのだ~っ!!
「はあ? 」
「はあって、なんだよ」
そんなんあたりまえやん。全然違うやん。大好きなんきまってるやん、いつも一緒にお
るんやから、秘密ちゃうやん。ふっふっふ、そこが浅はかなのだよ、大阪、えろえろも混
じっているのだよ。
「はあ? わけわからんわ」
「そのほうが、好都合。ほら、大阪、大阪のばんだぞお」
からかわれたような気になった春日は、一瞬きゅうと眉毛を吊り上げる。しかし、彼女
の心は海ほどの大きさがあるのだ。具体的には瀬戸内海。蛸もすむ。今はシーサーも住ん
でいる。
わかったわ、ともちゃん。じゃああたしの秘密。
「あたしな、もう、初体験すんでんねん」
おおお、す、すげえ!!
「いつ? どこで? だれと? どんなだった!? 」
「5W1Hやな」 後二つたりへんけど。
「き、気持ちよかった? 」
しんとした空気。しなやかな細い両手が肩まで垂れ下がった髪をすくいあげ、頚骨のつ
け根辺りできゅっと止める。大阪の目は閉じられて、側の箪笥から髪ゴムを摘み上げ、髪
をまとめる。見慣れない、大阪のポニーテール。
「ともちゃん、これが、あたしのもう一つの顔やー!! 」
「おおっ、てポニーテールにしただけじゃんか」
ふっと微笑む春日歩。蛍光灯に照らされた肌は酒色に照らされた首筋と、彼女が自信を
持つ美しいうなじ。胸元のを微かにひけばゆったりした薄緑色のシャツも一緒にめくれる、
形よい鎖骨とシンプルなブラジャーがのぞく。片膝をきゅっと立てると、スカートがゆる
りとめくれて右足の太ももがあらわになった。
あの人とはな、あるパーティで一緒になったんや。語り始める大阪、ポニーテールさら
り。智は緊張して唾を飲む、ごくり。
春の静けさの中、どこかで猫が鳴いていた。
- 828 名前:『あたしの秘密あなたの秘密』《3》 投稿日:03/12/12 03:53 za2Lpyl+
- 「……、でな、耳たぶは、前から噛まれても後ろから噛まれてもひうってなんねん」
この三十分、ともの顔からはゆるゆると緊張感が抜けている、忘我の相。彼女の元気の
印、ホットパンツから突き出た足は何度か組替えられて、今は軽く押しつけているかかと、
女の芯の部分衣服越し。下着こすれると、お尻がきゅっと締まる。何度目かの唾を飲む智。
「その間さあ、乳首は? 」
「やあらかく、いじっとんねん。それに脇の下もな、さわさわされるとひゅうって、なんねん」
「おお、脇も感じるところ、古の伝説どおり、だな」
「黒沢先生に乾杯や」
形ばかりの乾杯が終わると、智はまた脚を組替える。乳房が、張った感じ。触ったらど
んな感じだろ。さりげなく股間に手を当ててみる。親指で軽く押してみる。ん、充血して
るかも。勝手に想像してみる。どんな男の人なんだろう。大阪の話は詳細に渡っているの
に、肝心の相手についてはこんな感じの人、と言うことしかわからない。
「脇の下は、キスしてあげてもいいねんで。こうやってな、軽くキスしながら、ちろちろ
舐めてぇ」
ふんふん。のりだす智の瞳は少年の好奇心から女の好奇心へと変化している。いつのま
にかジャンパースカートのボタンを外して、あらわになる大阪の肩。汗に湿ったシャツ。
「でさ、あそこでした感じ、どうだった? 」
「あそこて~? 」
「まんこ」
今までの淫蕩な流れを断ち切るような無粋な単語。しかし、ピクリともしない大阪。
んー、おまんこはなあ。舐めたりいじったりのほうが気持ちええよ。そうか、まんこはそ
んなによくないのか。いや、悪いわけやないんやけど、ずっと触ってたほうが、ずっと、
お互い感じあえてええねん。そーか、まんこはだめか、まんこ、まんこ、……大阪!!
「え~? なに? 」
「なんで少しも恥ずかしがらんのだ、おまえわあ!! 」
なにが? 人がまんこいってるのにぃ、恥かしがらないなんて羞恥心ってもんをなくし
ちまったのかぁ? ん~、ちゃうねん。なにが! だって大阪ではそういわへんもん。
「ちっ、すんでる場所が違うと通じない言葉があるってことか!! 」
じゃあなんていうんだ、大阪!!
大阪はにこにこ。その胸元は咲き誇る桃の花に染まって。ふと、すえた汗の匂い。
- 829 名前:『あたしの秘密あなたの秘密』《4》 投稿日:03/12/12 03:54 za2Lpyl+
- 「で、はじめてのちんこはどうだった? 」
「そんなん、入れてないよ」
「じゃ、あそこは何もしないのかよ」
男の人のものやなくても愛し合う方法は幾らでもあるで。なに? おとなのおもちゃ?
そんなん必要ない、これや!! 突き出す中指、ゴールドフィンガー。
でも、そしたら相手の人気持ちよくないんじゃない? その問いに、大阪は不思議な笑
いを送る。見下すような慈しむような。
「あたしも指で感じさせるねん」
なんだそれじゃあ初体験じゃないじゃん。なんで? だってさ、エッチってチンコ入れ
なきゃさー、イかないでしょ、チンコ入れないと。そんなことない、愛があればイける。
でもチンコ入れたほうが気持ちいいんでしょ。それ、思い込みとちゃうかな。違うね、
やっぱり入れないと本当に初体験じゃないね。やーい、こ、ど、も、こ、ど、も。
「ともちゃん、そんなにちんちん好きか? 」
「……あ、いや、好きかといわれると」
「あたしは好きやない。入れたことはないから嫌いっていえへんけど、好きやない」
ピしりとした言葉に、思わず口篭る智。濡れそぼった下着が冷えてくる。静かに、火照
った身体酔いから醒める。
「ともちゃんな、おめこは好きどうしやからするんよね」
あ、う、うん。嫌いなものどうし、したりする? 例えたら失礼やけど、木村先生とし
たい? い、いーや、全然、ぜーんぜん。
ぶるぶる首を横に振る冗談じみたオーヴァーアクションの智。おどけて笑いに逃れよう
としたのに、大阪は許さない。まるで許さない。
そやろ、好きやから一緒になりたいねん。うん。
したらおめこって愛する行為の一つやんか。そうかも。
でもともちゃんは、ちんちん入れへんとエッチしたことにならんていう。
「ほならや、事故でちんちん無くなった人はどないすんの。エッチできんってこと? も
う、愛し合うことも、出来んってこと? 」
「そ、そしたら、心と心で」
心だけで、イケるか、アホ!!
- 830 名前:『あたしの秘密あなたの秘密』《5》 投稿日:03/12/12 03:57 za2Lpyl+
- 思わずびくっとする。大阪の目は据わっている。
確かに、心の触れ合いだけで成り立つ愛もある。でもな、心だけやのーて、心も身体も
一緒に気持ちよくなりたいもんと違うか?
「好きやから、触ったりしたい思うんやんか。一緒にいたいんやんか。じゃ、なにか? 爺
さんと婆さんはもう物も役に立たんようになっとるから、愛し合う資格ないとでもいうん
か!! 」
「じゃあさ! 」
むきになって言い返す。
やり込められた悔しさからか、何かと抗うような眼。心の壁に突き当たった獣の目。
「じゃ、別に、男と女じゃなくても、いいじゃない!! 」
そのとおりや。
春日歩はきっぱりと言い切った。
でも、大阪、初体験したって。だれも男の人とエッチしたなんていうてへんよ。え? 智
は混乱する。でも、身長が高くてがっしりしていて、肌はよく焼けてて、大阪抱き上げた
り出来るくらい……。あたしくらい、ともちゃんかて抱き上げられるわ。確かに
初体験、の響きに勝手に男を想像してただけだ。
「じゃ、女の人としたってこと? 」
「それはどーかなあ? 」
え? だって話の流れから言ったら、どう考えたって。
あたし別に、何もいってないやろ。ただ、あたしが初エッチでめちゃめちゃ感じた恥か
しい話をしただけや。な、おっきな秘密の話やろー。それで、充分やん。
「そんならサ、今もエッチしてる、でしょ」
鋭いなー自分。大阪は皮肉に笑って、いかくんをくちゃくちゃ噛んだ。酸い酒の匂いの
中にいかの匂いが混じる。それサ、どんなやつ? 初エッチと同じ人? 違うわ。一回目
はエッチしてもいい人、今は愛してる人。愛してる人? それって女の人?
「さてなー。どーかなー」
じゃ、あたしの知ってる人?
「さーて、教えられへんなあ」 ぽやっとした顔が、意地悪い微笑みを浮かべた。
- 831 名前:『あたしの秘密あなたの秘密』《6》 投稿日:03/12/12 03:58 za2Lpyl+
- 「好きな人の身体触ってると、幸せな気分になれるんよ」その人、可愛い? かわええよ。
日焼けしたところと焼けてないところのさかい舐めたると、すごいハズカシがんねん。あ
んなぁ、下着の下はカフェオレ色で、日に焼けたところはコーヒー色。でもな、乳首はピ
ンクやねん。そいつ、髪長い? ん? 眼鏡、かけてる? ん? 何考えてんのか知らん
けどノーコメントや。ノーコメント。なんだか、胸がもやもやしてる。
「大阪、意地悪だ」何のこと、ポニーテールが斜めに傾ぐ。
「だって、智ちゃんも意地悪したやろ」
水割り用のペットボトルに直接口をつけてぐいぐい飲む、大阪。口元から水が流れ出る。
飲んでいるよりも、遥かに零れているほうが多い。胸元の薄緑が、濃い緑の染みになる。
「あちゃ~、こぼれてもおた」口の端をつつと滑る水。涎の跡のよう。
ともちゃあん、脱がせて。
波に揺れるワカメのようにくにゃっと両手を智のほうに投げ出す大阪。うなじが、ぬる
りと光る。
え?
思わず、両手を前に出して、萌黄色のシャツを剥ぎ取った。ちらちら見えていたバンド
型のブラ。乳首が固くしこっている。ぽそん、とシャツを置く。自分の腕から力抜けてる。
おおさか、むね。ああ、これ、楽やねん。ほら、肩から下げるのって、すぐこってくる
やん。左右の突起から突起へのなだらかな線。見逃せない。どうしてだろ?
「おおさか、もし、あたしがレズなんか嫌いだっていったら、どうするつもりだったの?」
「え? でもともちゃん友達やろ」それで友達やめるともちゃんやないでしょ。そりゃそ
うだけど。じゃ、ええやん。でも、普通じゃないじゃない。上ずる声、変な気持ち。
「えへへ、レズなんて言うてないよ、あたし」
なんだよもーっ、はっきりしろ!! ずるいぞ大阪!!
ずるくない。
「ずるいのはともちゃんや」
とろんとした瞳、でも言葉は断定的。
もう、めっちゃかんじてるんやろ、そんなこといって。
あたしと、してみたいんやろ。本当は。
あたしは―― ほんとうは
- 832 名前:『あたしの秘密あなたの秘密』《7》 投稿日:03/12/12 03:59 za2Lpyl+
- 請われるままに口付ける大阪の頬
大阪の頬を感じる理性壊れるまま
戯れに動かしてみるちろちろと舌
ちろちろ燃えるは欲望青白い狐火
あたしの手は剥き出しの肩抱いて
肩甲骨までにぢりよる十本の芋虫
鍵盤叩くみたいに踊る十本の芋虫
ええよ、ぬがしたって、このブラ
形いい胸手のひらサイズの楽しさ
舐めてるから額にあたる馬の尻尾
大阪の細いうなじ舐めているから
膝が股間にあたってぐりぐりする
大阪が擦りつける膝あたしの芯を
ぬるり、下着の布目粗い、感じる
どや? ともちゃん、膝の感じ?
ひ、くう、とまらないうめきごえ
ともちゃんあかちゃんちゃうの?
舌で転がす乳首柔らか大阪の乳首
乳首に吸いつく唇SUの発音の形
ご褒美あげる、可愛いあかちゃん
ぁ、めえ、ダメつま……まないで
頭の奥キンとする、動き、止まる
敏感な乳首人差し指と親指の餌食
しゅうちゅ、……きないよぉやぁ
「も、と、なめ……ぁいのにぃ」
「いじきたないな、ともちゃん」
おおさかのこえ、とけてる
あたしのからだもとけてる
- 833 名前:『あたしの秘密あなたの秘密』《8》 投稿日:03/12/12 04:00 za2Lpyl+
- くふん、ぅん大阪の鼻の奥震える
あたしの舌這う大阪の感じるとこ
両手で広げるふわふわした太もも
縮れた毛は思ったより固くて太い
でも撫でてあげる優しく舌で舌で
そこ、おま、めは、や……ぇてぇ
さかさま言葉さかさまの世界では
まさかの行動、そうそのまさかさ
紫のうてな赤い花弁ひくひく動く
退化した雄しべの皮を舌先で剥く
恥知らず平たくした舌細くした舌
つきさす蝶の舌は大阪の蜜求めて
まるで枯れ果てた犬の水貪るよう
そのたび腰は横へ縦へ前へ後ろへ
優しく包み込んで唇で吸ってみる
なお震える腰、鼻先で感じる柔毛
だめえ、ともちゃんだめえ。とまらんようになってまう。ずっと、してまうの
いいよ、したい、あたししたいよ。ほらさわって、あたしもこんなになってる
だめよともちゃん。大阪の必死な声。
ともちゃんすきなひといてへんの?
- 834 名前:『あたしの秘密あなたの秘密』《9》 投稿日:03/12/12 04:01 za2Lpyl+
- 好きな人、いるよ、あたし呟く声
思い出すとこわばる身体、指の先
冷える身体、冷める心、醒める心
思い出せば止まらない涙ぽろぽろ
なにしてるんだろうあたしばかだ
絡み合い溶け合いしていた二人は
今は組み合うだけの不恰好な姿勢
愛がないただ無様に愛だけがない
- 835 名前:『あたしの秘密あなたの秘密』《10》 投稿日:03/12/12 04:02 za2Lpyl+
- シャワーを浴びてすっきりした智は、もうパジャマに着替えている。さっき泣いたのが
嘘のようだ。散らかったものを部屋の隅に集めたり、している。
「おまたせえ」
春日が今部屋に戻ってきた。ほや~っとした顔は緊張感が抜け落ちて、もうすっかりお
休み前。じゃあ、寝ようか。うん、そーしよ。ところでさあ、大阪。
「今日だけ、一緒のベットで寝ちゃ、ダメか? 」
大きな瞳がきょとんと見ている。拒まれるのではないかと智は少し恐れる。
なして? いや、なんか、人肌恋しいっていうかさ。ともちゃん、帰って。えーっ!
「うそうそ、あたしも、今日は人肌恋しいねん」
明かりを豆電球にしてから智は壁際に横になる。大阪がその懐にゆっくりと身を横たえ
る。智は、そおっと抱き寄せた。
「へんなことしないから」
「わかってる」
胸元に、大阪の鼻の頭を感じる。シャンプーの匂いがする。
「へんなこと、しないから」
「わかってる」
胸元から智の匂いがする。頬を押し付けると布越しに、乳首を感じる。
「へんなこと、しない、から」
「……かって、る」
二人の鼓動、とくんとくん。強く波打ちだす。
「あんな、ともちゃん、白百合の小道って知ってる? 」
「しらない」
唐突な質問に、智の気がまぎれた。抱きしめる腕の力は強くなったが、よみがえりそう
だった怪しい感覚は霧散する。
「あたしな、まえ行ってたクラブでは、ただのネコやと思われてたんやけどな、最近スカ
タチかなーとか思ったりするんよ」
マヤーのこと? ちゃうねん。いいながら、額を智の肩口に擦りつける。
「ともちゃんは、行く必要ないな。だって、なんやかんや言って素直やもん」
- 836 名前:『あたしの秘密あなたの秘密』《11》 投稿日:03/12/12 04:05 za2Lpyl+
- 大阪。なに? 暗がりの中ひっそりとかわされる声。
「あたし、まだあんたの言ってることの真意が掴みきれてないんだけどさ。もし間違って
受け取られてたらどうする? 」
「間違ってたらって? 」
「例えば、さっきのことみたいに、女だけど男、とか、友達なのに恋人、とかさ」
「それは、表現者の問題やな。表現の仕方が下手だっただけや」
そうやって失敗してかんと、あかん。大切なのは人の話を聞くこと。でも言い訳はせん
ようにせんと。謝っても言い訳はいかん。モラトリならそんくらいの心決めなきゃあかん。
そうやって、一人で解決してくつもり?
「一人やない。友達もいるし、恋人もおる」
それ、あたしも入ってるの? 勿論。
それ、ちょっとずるいな。
ずるくないし、覚悟決めとる。
ずるいのはともちゃんや。下手したらあのまま二人朝までエッチしてたかもしれん。い
いじゃん、しても。大好きな人とエッチしてみい。もっと気持ちええよ。
したいからするエッチは、もうちょい余裕できんとだめや。……それに
「それに? 」
「……そんなこと、したら、か、ぅら、……ぃてまぅ」
ん? 覗き込む智、大阪は寝息を立てている。眠りの抜け殻、ふうと息をつく。よかったのやら悪かったのやら。
「そっかー、いいのか」
そのつやつやした髪を撫でながら智は思う。うとうとしながら智は想う。
「あたしも、おとなにならなくちゃなのだ」
眠る大阪をぎゅーして、智は目を閉じる。 口から洩れる決意の呟き、冗談めかして。
……みぃ、あたしのえっちの、とりこにしてやる。
囁きを聞いたように、大阪がぎゅっと抱きしめる、智も抱き返す。
どこかで、懲りない口付けの音。
微かに猫の、鳴く声がした。