209 名前:『HOTした舌』《1》 投稿日:04/01/02 00:16 kVNl3quE
 ほんとによみは激辛好きだなあ。
 じゃあ、食うなよ。
 二人でごろごろしながらハバネロを食べる夕べ。
 智の舌、ぴりぴり。サイダーでそっと慰めた。
 空は一点の曇りも無く冬空のすがすがしさ。切りそろえた髪からにゅっと生えた智のう
なじに、窓のさんの影。うつぶせて本を読みながらハバネロの夕べ。これから瞬く間に夜
になる。少年の好奇心、失わない目が友を見上げた。
 よみさー。
 呼ばれた娘視線を落とすうつぶせる彼女に。クッションを背にくつろぐ部屋は智の家の
二階。長く伸びた髪、その髪を今は肩口でそろえて。上質のセーターが浮きたたせる、ま
ろみのある胸腹腰のくびれ。音を立てそうなくらい、きゅっと吸いついたジーンズ。
 こどもだねー。なんだよ突然。だってさー。
 袋にまた手が伸びる智の手、よみの手がぴしゃり。
 なんだよー。
 おまえ食べすぎだ私が買ってきたのに。
 いいじゃんいいじゃん。よみはケチだなー。
 そしたらしぶしぶ手をひいたよみ。ラッキーと智の一つまみ。
 で、子供ってなんのことだ。
 激辛好きってところ。思いもよらぬ謎かけによみは頭をひねる。
 ぽりぽりかじって、ちゅぱ、ちゅちゅ、と智が指を舐める音。
 汚いな、思わず口をつくよみの言葉、ニヤニヤ笑う智。じゃさ、よみがなめて、きれい
にしてくれる? 突き出される手を押しのけて、誰がおまえなんかの指。
 あーあ、子供だなあよみは。本当は舐めたいクセにさ。
 だれがだ!!
 背にひいたクッション、智に押し付ける。わふ、苦しい、苦しいよよみ。じたばたじた
ばた。背と腹入れ替わり顔に押し付けられる柔らかなクッション。大げさな動作のくせに
楽しそうな声。クッションは奪い取られて智が抱え込み、行き場の無くなったよみの手は
智の額を撫ぜる。


210 名前:『HOTした舌』《》 投稿日:04/01/02 00:17 kVNl3quE
辛いものってさー、大人向きって思うじゃん?
 まあそんなイメージはあるな。よみはうなづく。
だけどさ、あれってただたんに辛いだけでサ。単調な味なんだよね。基本的には。
ふんふん。うなづきながらよみはぽりぽりかじる、ハバネロの日暮れ。
空は澄み切った青から灰色へ。クッションもセーターも智の着ている緑のシャツも、深
い深いしじまに沈もうとする日暮れ。珍しくロングスカートの智のすねも夜の影を落とす。
刺激強いから食べ続けちゃうけど、味は単純なんだよねー。そこまで口にした智の頬を
ぷにーとつねるよみ。いははは、あにすんらよ、よみぃ。いや、別に何となく。
もう少し強く、でも柔らかく。つねるよみの指先は、がう、ピラニアみたいに噛もうと
する智の口元からすばやく、逃げた。
それで? 単調なのがどうしたって? 尋ねるよみにぷいと横向く智。乱暴な眼鏡には
教えないもん。乱暴じゃないよ。でも智はぷんとしたまま。乱暴じゃないなら、なんなの
さ。ぎゅっとクッション抱きしめる智。そのぴんとみずみずしい背中に呼びかけるよみ。
とも。智。ともお~。幾度か呼んでも答えない友の拒絶した背中。途方にくれるよみ。
……ごめん、そんなに痛くしたか? 心細そうなよみの声。その声にくるっと振り向く
智の顔は、ニコニコ笑って。
ばーかばーか、痛いわけないだろ。よみは単純だな。なにを! ホッとしたよみの反撃
開始。智の喉を絞める。柔らかくやわらかくもう少し強く、でもさっきよりもっと丁寧に、
柔らかく絞める。
やっぱりよみって単純だな。喉を絞める手を押しのける智の手のひらは、よみの右手を
掴んでそのまま離しはし無い。なんだよ、それどういうことだよ。口調がきつくなったの
に何故かよみも離さない。
窓の外の町並みが音を立てて明かりを灯す。
そのくらい静かな、ともとよみの日暮れ。
るんるんるんと微かに聞こえる暖房器具の音、灯油の匂い。



211 名前:『HOTした舌』《3》 投稿日:04/01/02 00:18 kVNl3quE
子供はさ、単純な味しか理解できないんだよ。舌が幼いから。その上、大人ぶろうとし
て他の人が余り手をつけなさそうな物を食べる。
それは、確かに一理あるかも。
うんうん、納得するよみ。もうずいぶん暗がり。
だから、よみは子供。なんだよそれ、ずいぶん唐突だな。言い返すよみ、ふと気づいて
すぐに問い返す。
でもそれって唐辛子の辛さだろ? 単調な辛さって? 
そうだよ。段階はあるけれど、みんな基本は同じ味。
確かにそうかもしれないけれど、わさびの辛さと違うだろ?
よみの手首を親指の腹で撫ぜるとも。考え中、思案顔。
うん、違うね。だから子供はわさびが嫌い。ま、個人的な好き嫌いはあるけれど、子供
は大抵わさびがだめ。じゃあ、私は大人だな。わさびの辛さも好きだ。そ、じゃあよみは
大人だ、よかったね、よみ。なんか、改めていわれると嬉しくないぞ。にっこり笑って智
は手を離す。よみの手を離す。
よみ、あーん。タイミングよく言われてよみはハバネロをつまむ。寝転がった智の唇に
触れるハバネロ、舌が伸びて絡めとる。手を引こうとすれば智の手がぐっと押し止めた。
だからさ、久しぶりに甘いの食べたい。
じゃ買ってこようか。甘いの無いから。
子供だなー、よみは。
智の唇がそっと含むはよみの人差し指。
唾液に潤った口の中、ぬるりと動く舌。
舌の背舌の腹舌の先くすぐったい味蕾。
爪の先隙間に染み込んだ味辛い辛い味。
今だに辛い菓子の後味。よみの指の味。
第一関節力は抜けてもてあそばれる指。
さっき強張った左手は今また弛緩して。
智はそんなよみの反応に至極ご満悦。
外はもうすっかり暗い。美しい冬の空冬の闇の空。


212 名前:『HOTした舌』《4》 投稿日:04/01/02 00:18 kVNl3quE
甘いのもさ、ただ甘いだけのはあんまりよくないよね。
 うん、うんうなづくよみは半分は同意。もう半分は智にまだ余裕を見せたいから。
 ただあ、まいのは、舌に残って、べっとりと、あまい。
 じゃあ、よみは甘いのはさっぱりめとこってりと、どっちが好き?
 智の舌よみの手首滑る滑る。舌の先で感じるよみの静脈。
 固く握られる右手固く固く。我慢する力がよみの肩まで。
 ……っちも、…き。
 なに? よみ?
 どっちも、すき。だ。もう! やめろ!! バカ!!
 ばかじゃないもーん。智の声。それにまだやめないもーん。ささっと這いよって、お腹
にぎゅっと抱きついた。馬鹿扱いは、よみがあたしを愛している想いに免じて赦してやる。
 ほら、指、舐めて。差し出される智の指。
 唇の周りを撫ぜる指。隙間こじ開ける指。
 段々に甘噛みする歯、白い歯よみの前歯。
 奥歯の咀嚼舌の横腹、味見される智の指。
 力抜いてなすがままになる感じる智の指。
 味わうために吸いついてすぼめられた頬。
 くちゅちゅ、んくんく赤ちゃんみたいに。
 よみはやっぱり子供だな。優しい声、優しい優しい智の笑顔。
 ……んだ、よ。ぁんで、そうなんだよ。唇から智の指を解放した。よだれたらりと糸引
いて。
いいんだよ。よみは子供で。よっ、と起き上がる智。今度はよみの肩に手をかけて。だ
ってあたしも子供だもん。よみ? 甘いの食べたい? 何のことか分からないよみはほん
の微かに首を振る。よみ、あたしはね、甘いの食べたい。
「よみのことたべちゃいたい」
 唇が唇に触れる。
 唇が唇を感じる。
 夜の満ちた部屋。
 真っ暗な部屋の中で二人は唇を貪る。
 辛さで敏感になった舌が悦んでいる。


213 名前:『HOTした舌』《5》 投稿日:04/01/02 00:29 kVNl3quE
セーターの中に智の指。まだ微かに唾液に濡れている。肋を撫でる。柔らかく肉付いた
肋骨を撫でる。いたるところにふり注ぐキス、降り注がれるキス。留まらずに洩れる声。
よみの感じてる声。ん、んく、と堪える音、智の喉の奥の音。ぷつんと外される白く清潔
な胸当て。ますますめくりあげられるセーター、剥き出しのたわわな胸。
 よみ、なめていい? 聞くなよそんなこと! 
 じゃあ遠慮なくとやわやわ含むよみの胸の蕾。ぽってりと膨らんだしゃぶりやすそうな
蕾。泡立つ肌ぶつぶつぶつぶつ感じてる証拠。片方の乳房は柔らかくもまれ、もう片方の
乳房に吸いつく愛しき智の唇。やがてその手はゆるゆると腹を這い丹田を撫で、器用にか
ちゃかちゃと外していくジーンズの留め金。ああ、もう、キスの洪水。舌鼓の宴。
 やん。思わず洩れるよみの可愛い声。
 膝まで下ろされるジーンズ、剥き出しの太もも。智の舌は臍あたり撫ぜる、突っ張るよ
みの足その親指。舌はやがて薄布の上を犬のように舐めてる。合計二十本の指、よみの指
がグーになる。喉から洩れる音歯を食いしばったまま、子音のKの音。智の舌先懸命にずら
す、薄布の砦。指先も加勢して露わになるよみの腰の蕾。

214 名前:『HOTした舌』《6》 投稿日:04/01/02 00:30 kVNl3quE
 よみ、なめて、いい?
 ……くなよ、…んな、と。
 今度は黙ったまま、舐める智、ぺろぺろと卑猥に。おしつけたりじらしたり繰り返し震
えるよみの声。それを聞いてじっとりと濡れる智の股ぐら。よみの指と唇を好きな智の股
ぐら。いた、痛い痛い。よみの喘ぎ声。どうしたの? 刺激強すぎた? 心配そうな智。
ん、なんか、ひりひりする、どうしてだろう。ひらめく智、もしかして、ハバネロのせい
かも。ちょっと待って、と残ったサイダーで口の中すすぎ。側のティッシュでぬぐう自分
の舌とよみの敏感なところ。
 どう? まだ痛い? ん、少し染みる……。
 じゃ、綺麗にしてあげるねとまた舌を這わせる智。辛さと痛みで敏感になったところに
より慎重な舌。触れるか触れないかの忍び足にじわりとにじむ蜜。よみ、あまいよ。うる
さい、馬鹿。よみの指先がぎゅっと智の髪を掴む。よみの膝かたかた。智の膝もかたかた。
興奮している二人の吐息混ざる夜の闇。時計の針はまだ六時半を回った辺り。道行く人の
声、足音、自転車の車輪回る音。わんわん、黒の鳴き声。
それなのにこの部屋は静か。
 二人の肌のすれる音。


215 名前:『HOTした舌』《7》 投稿日:04/01/02 00:31 kVNl3quE
まだ痛い? 微かに囁く智。もうその吐息だけで痺れる赤い芯。んくうっ、声が洩れる。
 気持いい? んくうっ、んくっ、喉から洩れる声言葉にならない。噛み締める唇と奥歯。
柔らかな窒息ぴりぴりする肌。大きく吸い込む息、開放された肌触られてぞくぞくする。
 恥かしくなってごらん、よみ。囁くとも。その言葉の意味を知って、顔を横に振るよみ。
 や、いやだ、はずかしいから。出来ない。
 大丈夫、大好きな暦の声、聞きたいから。
 ほら、と促して、ぬく、と滑り込む智の指。細い智の指を包み込む、暖かく柔らかな肉。
 あ、感じる。私、感じてる。智の指。
どんなふうに感じてるの? 言ってみてよ、暦。
 ……すれてる。きゅっきゅって、すれてる。
 じゃあこれは?
 ふ、く……! Fの子音とHの子音。よみの喉の奥。そのままぽそぽそと二人の会話。
闇の中ぬるりと動く娘の身体。愛する人が上り詰めるまで。
やあ、もう、私……っちゃう!! はああ。っや! ……も、ともおおおおお。

とも、じぶんばっかり、ずるい。むくれるよみは智の背中を舐める。くふうくふ、感じ
る身体、今度は智の番。今度は私がしてやるよ。智の首筋、好きなところ。とても感じる
ところ。スカートを捲り上げて下着を引き下ろして、四つん這いになる智、丸出しのお尻。
つやつやしている肌にまた舌を這わせ。期待に震える智、目を閉じる固く固く。ぽり、ぽ
りぽり、聞こえてくる何かをかじる音。こよみ、なに、してるの? ん、仕返し。自分の
指舐める音、よみの舌の音。ハバネロかじる音。
「とも、……大好き、だよ」
 ここで照れるのはまあご愛嬌。試そうとしているのはちょっとしたサドマゾ。胃に送り
きれなかったハバネロ、舌にこびりつき。よみの舌智の愛しい花弁に触れる。

 ぎゃぴい!

 智の声。そして喘ぎ声。


216 名前:『HOTした舌』《8》 投稿日:04/01/02 00:32 kVNl3quE
 美味しいもの食べたい。
 二人で美味しいもの食べたい。
 ウィンドウショッピングして、たまに手をつないで、知り合いを見かけたら離して。
 カラオケいって。 久しぶりによみの下手な歌聞いて。(うるさい! )
 二人の汗の匂いと同じくらい愛しい時を過ごしたい。

 そうだ。
 明日はお寿司を食べよう。
 回っているのでいいから。
 二人でお寿司を食べよう。
 混まない時間をねらって。
 わさびを効かせて貰おう。
 魚の甘味が引き立つよう。
 魚の旨味が引き立つよう。
 悲しい恋が有ることを学習する為に。
 楽しい恋が有ることを復習する為に。
 辛い現実があることを理解する為に。
それを遥かに超える喜びを、二人で感じるために。

「よみ、明日は、お寿司食べに行こうな」
「いいけど」
「回ってるのでいいから」
「そうだな」
「……何だよ、何か食べたいもんあるのか? よみは。まさかまた激辛か? 」
「ううん。そうじゃない。お寿司の前に」
 ともを食べたい。
 
とっぷりと暮れる、ハバネロを食べた夜更け。食べ残されたハバネロ。これからは星座
のお茶会。甘い甘いケーキ、クッキー、チョコレート。口休めに、時折かじるハバネロ。
 二人のキスの音だけ夜に響く。時計の針は十二時を過ぎて。
世界の、なんと静かなること。



[PR]I肢ʼn^Ӓ:ۂ̐肢tɂ{i^Ӓ肪