
- 676 名前:想い 投稿日:03/11/28 02:26 R3Ow34Ff
- 榊×神楽です。
さんざん書かれているので今まで書かれた方のとかぶる部分がありますがご容赦を。
何かおかしい。
そう確信したのはつい最近の事だった。
周囲はいつもと変わっていない。
家も、友人も、学校も。
私自身は一年生の頃から比べれば大分変わったらしい。おかげで、友人と呼べる
人が周りに出来た。
そういった変化はとても心地よく、身長やスタイルにコンプレックスを持っていた
私は色々な方面からみんなに助けられていた。
きっと、マヤーに逢えたのもみんなと友達になれたからだと思う。
そうでもなければ、私はきっと修学旅行でも浮いているだけで、何も出来ずに終わっていたのだろう。
なのに、最近そういった変化とは逆の、昔の私を思い出してしまうような感覚に苛まれる。
どうして?
答を探していた。
そして考えつく。
そうだ、こういう時こそ友達に話し…。
そこまで思い、初めて私は自分が感じる違和感に気が付いた。
神楽。
最近、私は彼女と話をしていなかった事に気が付いた。
無論本当に一言も口をきいていないと言う訳ではない。
毎日挨拶をするし、みんなと雑談をする時には相づちを打ったりもする。
でも。
最近、私は神楽と一緒に帰宅していない。
神楽は部活があるので当然毎日という訳にはいかないが、それでも休みの日は必ずと言って
いい程神楽は一緒に帰ってくれたし、私が少し帰るのを遅らせると、出来るだけそれに合わせて
部活をやりくりし、神楽は帰り道を付き合ってくれた。
- 677 名前:想い 投稿日:03/11/28 02:27 R3Ow34Ff
- いつしか、私は神楽と一緒に帰らない日の方が違和感を感じるようになっていた。今日も私は一人で帰り道を歩いている。
でも、少し前からそうなのだが、ただ帰る訳ではない。最近の日課となった事がある。
ちよちゃんの家に寄らせてもらい、マヤーとしばらく遊ぶ。
これが私にとって一日で、いやきっと人生で一番愉しい時だ。
マヤーは野生であるに関わらず私にとても良く懐いてくれている。
私はそれが心の底から嬉しいし、これからもずっとそうでいられると信じている。
それなのに、最近どこか心が満たされていなかった。
その理由。
それが神楽だと気が付いた。
神楽が最初に私の前に現れた時は正直、ずいぶん戸惑ったものだった。
元々のクラスメイト達と違い、用のあるなしに関わらず彼女は私に積極的に話しかけてくる。
同意を求める話をする時もあれば、ただ一方的に喋るだけの時もある。
でも正直うるさいとは思わなかった。
それは、口数の少ない私がかろうじて話題を出す時は必ず全てを聞いてくれるからだ。
それにどこかでこういったふれあいを求めていたのだと思うから。
私のような引っ込み思案には、彼女くらい積極的な存在が必要なのかも知れない。
よみさんの友達も積極的と言う意味では似ているけど、正直あの子とは馬が合わない。
私が一番苦手とするタイプなのだろう。
なのに、似ている筈の神楽ではまるで印象が違う。
私は、そんな神楽の存在に安心感を何時しか覚えていた。
神楽は自転車が大好きで、よくは知らないけどマウンテンサイクルという荒れ道を走る為に作られている
自転車が好きらしい。
だから私の好きな動物や植物には殆ど興味が無い筈なのに、それでも神楽は私が話す話題を
熱心に聞いてくれた。
それが上の空や仕方なしではないという事は、神楽の瞳を見れば分かる。
神楽は強い意志を感じさせるあのまっすぐな瞳で、いつも私を見てくれていた。
だから私は神楽の前ではきっとおしゃべりになっていたと思う。
その開放感は正直嬉しいものだった。
下手だけど冗談を言った事もある。そんな神楽が最近、私と話をしてくれない。
そう気付いた。
- 678 名前:想い 投稿日:03/11/28 02:30 R3Ow34Ff
- 胸のつっかえが取れたと思ったら、今度は入れ替わりで言いようのないもやもやが胸の中に詰め込まれる。
『神楽、最近私を避けて…』
言えない。
どんな顔でそんな事を聞けばいいのだろう。でも、どうしても神楽に聞きたかった。
神楽と前のように話をしながら帰りたかった。この言いようのない苦しみから逃れたかった。
だが、もしも、たまたま部活が忙しい時期と言うだけだとしたら。
とても言えないけど、こんな事を神楽にを聞けばきっと全身全霊でそれに応えようとしてくれる。
大切な部活を押してでも私に合わせてくれるかもしれない。
自惚れかも知れないけど、神楽の事を考えるとそんな甘えた思いを持ってしまう。
だからこそ、私は神楽に聞きたかった。
その思いは日に日に、いや、一秒が過ぎる毎に募っていった。
授業中も、休み時間も、神楽の顔が目に入る毎に胸の苦しみは増していった。
もう、だめだ。
だから、私はその日神楽を誘った。
「あ…いや、ちょっと用事…」
神楽の嘘はとても分かりやすい。
目をそらし、あからさまに申し訳なさそうにするから。
生来嘘のつけない性格なのだろう。私はそんな神楽を見て、尚の事話をしたくなった。
いや、しなくてはいけない。
「一緒に帰りたいんだ。どうしても」
私としてはこれ以上ない積極的な科白。神楽はようやくそれに折れてくれた。
学校から離れ、程なくして私たちは二人きりになった。
でも、やはり前のような会話を神楽はしてくれない。
ばつが悪そうに周囲をきょろきょろと見渡し、何か気を逸らせる物はないかと考えている。
私と一緒にいるのに…。
私は、何か嫌な感覚が胸に生まれている事を認めていた。
- 679 名前:想い 投稿日:03/11/28 02:32 R3Ow34Ff
- 声を出すと、嫌な口ぶりになりそうで怖い。
だから私は努めて平静に、そして当たり障り無く、私がいつも話す話題で話しかけた。
それで神楽がいつも通りに対応してくれれば、そのままいつも通りに戻ってくれれば。
そう願って。
「マヤーが、最近ちょっと大人しいんだ」
「…そうか」
平坦な声で応える神楽。
「沖縄と違って気温が低いから、寒くなるこれからはちょっときついのかと思う」
「……」
「だから、寝床に何か暖かい物を敷いてあげようと思う」
「ちよちゃんの家なら…何かしてくれるんじゃないか?」
「そう思う。でも、私がしてあげたいんだ」
私はどんどん声が上がり調子になるのが分かった。
「…そう」
「マヤーには、私が必要なんだと思うから。そうしてあげたいんだ」
私は微笑んだ。嬉しかったから。
マヤーの話がではなく、神楽が応えてくれた事が。
気持ち、自分には神楽も微笑んでいるように見えた。
私は浮かれる。
「あ、あのさ、あたし来月だけど、祝日あるよな、その日、県の大会に出る事になってさ…良かったら…」
神楽が話をしてくれている。私は嬉しかった。
きっと、このまま前のようになれる。そう思うと私は有頂天になり、自然に口が開いた。
「すごいな。休みの日はマヤーと居るから行けないけど、でも頑張って」
私は心から喜んで応援したつもりだった。でも、途端に神楽の表情は暗く沈み、目線は足下に落ちた。
「神楽…?」
私は途端に胸を串刺しにされた様な気持ちになった。
「うん…そ…だよな」
俯いたまま、神楽の声が震えている。
突然、隣にいる神楽が遙か彼方に居る様な感覚に陥る。私は心臓が止まりそうだった。
- 681 名前:想い 投稿日:03/11/28 17:22 P+ZyFER8
- 「えと…。じゃあな」
そう言って神楽は顔も上げずに走り去ろうとする。
私は自分の体温が下がるのを感じた。
「神楽!」
私は反射的に行動していた。
「え…ぅわっ!」
神楽が悲鳴みたいな声を上げる。
いつの間にか、私は神楽を背中から抱きしめていた。
背が高いので神楽の頭がちょうど私の胸の位置に来る。
私は、とにかく離されない様に神楽を強く抱きしめた。
「な…なん、何だよ。ちょ、ちょっと…離して…」
突然の事に狼狽の声が上がる。
こういう時の神楽の声はとても弱々しく、正直とても保護欲をかき立てられる。
神楽は身を捩るが、さほど力は入っていないのが分かる。
拒否されていない。
私はそれが嬉しかった。
「嫌だ。離さない」
私ははっきりと自分の意志で言った。
「神楽が、どこかに行ってしまう」
私は不安に駆られた声で、神楽の耳元に呟いた。
しっかりと抱いた両手はちょうど神楽の胸の前で交差している。
スタイルの良い神楽の胸は女の私が触っても心地よい。
それが神楽だと思うとそれだけで不思議に気分が高揚するのが分かった。
「……」
神楽は僅かばかりの抵抗をやめ、その身を私に預けてくれた。
「ずるいよ、お前…」
「え?」
神楽は私の腕にそっと手を添えてそう呟いた。
腕を掴む両の手に力がこもる。
こんな時だと言うのに、神楽の一つ一つの行動が、私に近付いてくれる行動が嬉しくて頬がゆるむのが分かった。
- 682 名前:想い 投稿日:03/11/28 17:23 P+ZyFER8
- 「榊は…榊は、私より…マヤーが…」
そこまで呟き、神楽は口をつぐんだ。
「いや、ごめん。忘れて…」
「神楽…」
私は目が覚める思いだった。最近の私は、マヤーが現れてからの私は、全てにおいてマヤーを優先していた。
神楽は、きっと自分が疎外されている。そう思ったんだ。
私は色々な考えが頭の中で渦巻き、とても言葉を選ぶ事が出来なかった。
だから、せめて今できる事を考えた。
「神楽、全部言って欲しい」
「え?」
「私は…私は馬鹿だから…人との付き合いがあまりにも下手だから…すぐ自惚れてしまう。
すぐ、その有り難みを忘れてしまう。だから、教えて欲しい。神楽が、どれだけ悲しんだのか…」
私は自分が情けなかった。
「私は子供なんだ…。私を責めて欲しい。だから、だから…私から離れないで…」
「榊…」
私は強く強く神楽を抱きしめた。人気がないとはいえ、往来には違いない。
誰かが来るかも知れないというのに、私はなりふり構わずとにかく神楽を抱きしめた。
きっと、端から見たら異様な光景だろう。
うすらでかい女が、女の子を抱きしめているなど。
でも、私に出来る事はそれだけだ。ただ、神楽を離したくなかった。
だから、私に出来る事はそれだけだった。
「子供なのは、あたしだよ」
神楽は体をずらして私の腕の中で振り向いた。
「神楽…」
まっすぐに私を見る神楽の瞳。
意志の強さを物語る鋭く、そしてまぶしい程に純粋な、水晶のような瞳。
今は弱々しく潤んでいるが、それでも間違いなく、目の前にあるのは神楽の瞳。
ああ、この瞳だ。
私はこの瞳に見つめて欲しかったんだ。
そして今なら確信できる。
私は、神楽を求めてもいい、と。
- 683 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:03/11/28 17:24 P+ZyFER8
- 「お願い。私に言いたい事を言って欲しい。なんでもいい。だから…」
そう言う私に、神楽が身を寄せてくれた。
私の胸に神楽が埋まる格好になる。
邪魔な布が神楽の素肌の感触を妨げるけど、それでも神楽の体温が伝わる。
「私こそ、馬鹿なんだ。頭じゃ分かっている。分かっている筈なのに…。マヤーに、榊を取られた気がして…」
神楽の声に嗚咽が混ざり、顔を伏せる。
「ほ、ほらな? やっぱりあたしって馬鹿だ。勝手にちょっかいだしているだけなのに…。
ただ、勝手にまとわりついているだけなのに…。それでも、他の奴よりは仲、いいのかなって、自惚れて…。
そこに、マヤーが現れて、さ。神楽、本当にマヤーと居る時は愉しそうで…。
もう、私は話し相手とか、そんなのにもなれない。元々ライバルにもなれないし、あんたに気にかけられている
訳でもないから、だから、あんたの本当に欲しい相手が…マヤーが現れて、あたしはもう、誘っても相手にされない。
する理由もない…。こっちが勝手に、ただちょっかい出しているだけの馬鹿に思えて…だから、辛くて…でも、
踏ん切りがつかなくて…」
「神楽…」
神楽の声が震えていた。
「ご、ごめん、何言っているのか分からないよな? 馬鹿だから…」
肩も、その体も震えている。
がっしりしている筈の神楽の体がとても弱々しく、いとおしい程に小さく見えた。
「今日は…さ、誘ってくれて、嬉しかったんだ。ただの気まぐれだって、自分に言い聞かせたのに…。
だから、あたしの事なのに、来てくれたら、本当に嬉しいって思って…思ったとおり、玉砕しただけ。
あはは…、馬鹿だよ、ただの。馬鹿だよな、あた、あたししって…ほんとうに…馬鹿…だか…ら…」
私の服の胸元に青い点がぽつりと浮かび上がった。
それはふたつ、みっつと数を増やし、それと同時に、神楽の嗚咽は強くなった。
違う。
馬鹿なのは私だ。
甘えていたのは私。
- 684 名前:想い 投稿日:03/11/28 17:27 P+ZyFER8
- 神楽が居てくれたから、神楽が私を変えてくれたからこそマヤーにも逢えた。神楽が居たから、
安心してマヤーと戯れる事が出来た。神楽が居なければ、今の私は居なかった。
私は神楽を抱きしめつつどうすればいいのか悩んだ。
私の腕の仲で子供の様に悲しみ、泣きじゃくる神楽。
そんな神楽を見るのは何よりも辛い。胸に銛でも突き刺された様な痛みが走る。
しかも泣かせているのは誰でもない。
私だ。
「神楽!」
言葉と共に頭の中が真っ白になる。
私は無意識に行動した。
「え…」
大粒の涙を流しながら、神楽が顔を上げる。
「んっ!?」
次の瞬間、私は神楽の唇に私の唇を重ねていた。
驚きととまどいに神楽の瞳が見開かれる。
瞳に溢れていた涙が一気にこぼれた。
私は神楽を強く抱きしめ、そしてその唇を強く吸った。
「ん…!」
突然の事に神楽が驚き、身を捩る。
そんな仕草が可愛くて、私は尚の事神楽を強く抱きしめ、そして唇を強く重ね、舌をねじ込んだ。
「んー!」
生まれて初めての感覚に神楽は狼狽する。
でも私は決して離そうとはせず、自分が持つ知識で考えられる限りのキスを神楽に浴びせ続けた。
何の弁解にもならないけど、キス自体をしたかったのとは違うと思う。
ただ、とにかく神楽を私の側から離したくなかった。
なんでもいいから、神楽を私に縛り付ける何かをしたかった。
その方法が、私にはキスしか思い浮かばなかったのだ。
これならとにかく直接的に神楽を奪える。
私は神楽を自分のものにしたかった。
- 685 名前:想い 投稿日:03/11/28 17:28 P+ZyFER8
- まさかこんな時にみなも先生の知識が役立つとは思わなかったけども。
私は先生の経験豊かな知識に感謝しつつ、神楽を奪い続け、愛し続けた。
舌と舌をからませ、口の中を舐め、歯茎を、歯を、舌が届く範囲全てを嘗め回す。
密着した体が体温を共有し、唇は互いの唾液を舐め合う。
神楽も、だんだん私の舌に舌を絡め始めてくれていた。
嬉しい。
本当に嬉しい。
だから、私はもっと神楽の唇を味わった。
感じる。
それはこういう事を言うのだろう。
胸の先にしびれる様な、むずがゆい様な感覚が生まれ始めている。
とても恥ずかしいけど、下腹部にも似た様な刺激を感じる。
「神楽…」
私は唇を離してその名前を呼んだ。
「……」
神楽は上気し、潤んだ瞳で私を見つめていた。
「榊…」
神楽の両腕が恐る恐る私の腰に回った。
私は涙が出る程嬉しかった。
「い、いいの、かな…。女同士なの、に…」
神楽が私の胸に顔を埋めたままで呟く。
「好きだから、いい」
私は神楽の顔を上げさせ、もう一度キスした。
縛る為ではない。
キスをしたいから、そうした。
神楽も抵抗しなかった。
- 686 名前:想い 投稿日:03/11/28 17:29 P+ZyFER8
- 今度はそっと、軽いキス。
でも、さっきと同じくらい気持ちがいい。
神楽もそうなのだろう。
その瞳は眠たそうに潤んでいた。
「私の家に、来ないか。いや、来て欲しい…」
「え、ええっ?」
顔を真っ赤にして神楽は戸惑った。
「さぁ」
返答も待たず、私は神楽の手を握って道を急いだ。
引っ張られない様に、慌てて神楽が着いてくる。
ただただ、家に着いたらどうされるのだろう、と想像しながら。
私も、考えていることは一つだけだった。
家に帰ったらどうやって愛しあおうか。
どうやって愛を確かめあおうか。
自宅に向かう道すがら。
私の頭の中は神楽の手のぬくもりとその妄想でいっぱいだった。
- 687 名前:想い 投稿日:03/11/28 17:30 P+ZyFER8
- 終わり