
- 143 名前: Continuity (1) 投稿日: 03/01/31 21:02 ID:lJ3larcQ
- 夏の間、神楽の泳ぎの成績がふるわなかったらしいことを榊が聞いたのは、暦からの電話の中でだった。
『榊が聞いてないなんて意外だね。連絡とってないの?』
「神楽からの連絡は、前期の終わり頃から来なくなってしまったんだ。
夏休みにも、都合とか色々言われて結局会えなかったし……。避けられてるような気さえする……」
『ライバルだったあんたには、やっぱりスランプを知らせたくないのかな』
――でも、神楽。私たちは、それだけの関係じゃなかっただろう? 親友だったはずだろう?――
だから榊は、真剣な思いで神楽に申し入れた。「会おう」と。
秋風がかすかに並木をざわめかせる公園で、予定より少し早く訪れた榊を驚かせたのは、
煙草を咥えた神楽の姿だった。
「……1歳ぐらい、いいじゃん。吸ってるやつ多いよ」
「君の立場の事を言っている」
「1日3本までって決めてるし。気持ちを落ち着かせるにはいいんだ」
「友達と会うのに、落ち着く必要があるのか?」
神楽は黙って、傍らの吸殻入れに煙草を捨てた。
その横顔を見下ろしながら、神楽が薄く化粧している事に榊は気づいた。
それに、以前はくせ毛を雑に整えていただけの髪は、意識的にシャギーにされているようだ。
「……行こうか」神楽は、榊の顔をちらりと見ただけで歩き出した。
喫茶店でも話は弾まず、話題は榊の方から振らねばならない状態だった。
どこか気の抜けた受け答えをする神楽の表情は、喜びとも戸惑いともつかない奇妙なものだった。
ただ一つ確かなのは、記憶にある神楽の顔では決してないという事だ。
少年のような目をして、強引なほどに人なつこく話しかけ、笑いかけてくる姿はどこへ行ったのだろう?
「神楽」榊はやがて切り込んだ。「水泳の方、どうなんだ」
神楽は、楽しい話題とは言えなさそうな様子で不調を訴えた。
榊にとって辛いのは、軽々しく励ましの言葉が言えない事だ。
高校時代、才能の差というものを見せつけて神楽に敗北を教えてしまったのは、他ならぬ自分なのだから。
だが――それでも、親友として言うべき言葉はあるではないか?
- 144 名前: Continuity (2) 投稿日: 03/01/31 21:03 ID:lJ3larcQ
- 「……本当は、水原から聞いてたよ。でも、なぜ言ってくれなかった? それに連絡をくれなかった?
私はみんなの中で一番、選手としての君を気にしてるつもりだ。どんな結果でも、教えてほしかった。
何でも話し合うのが友達だろう? その事を私に教えてくれたのは、それこそ君だったはずだろう?」
聞いていた神楽は、テーブルに肘を付き、両手でおもむろに顔を覆って、うめくような声をあげた。
「これだから会いたくなかったんだ。会えば、こうやって優しくされちまうから……」
言葉の意味を量りかねて尋ねた榊に、「待ってくれ」と拒んでいた神楽がようやく語ったのは、
店を出た時だった。
「私、おまえに惚れちまってたみたいなんだよ……。女なのに……!」
返答の仕方が全く判らない榊に、神楽は苦しげな声を吐き出す。
「おまえのこと追いかけ続けてるうちに、そんな事になっちまってたらしい。
大学入って、おまえがいなくなってみたら判った……。
何だかなあ、よくあるラブソングの歌詞って、あれ本当だったんだなって感じさ」
「……私の何が?」
「おまえみたいにカッコよくて、才能があって、優しい奴なんて、他にいねえよ。
おまえにファンの女がたくさんいるのは知ってたけど、自分がそれになっちまうなんて……。
ずっとおまえに見られていたい。構ってもらいたい。私だけを、特別扱いで」
「今だって、君の事はずっと気にかけてる……」
「落ち込んでる時に、抱きしめて慰めてくれるか!?」神楽は、やり場のない苛立ちをぶつけてきた。
「スランプの間、そんな事を妄想してる自分が怖くて、連絡とりたい気持ちも抑えてきたんだ。
それでも、会えるとなったらこうして化粧してきちまうんだよ。笑うだろ!?」
化粧された神楽の眼は、彫りの深い二重瞼とまっすぐな線を描く濃い睫毛に縁取られて美しく、
そこに切ない色を湛えて見つめてくる姿に、榊は自分でも不思議な戸惑いを覚えた。
「……とりあえず、考えさせてくれ……」その日の榊には、そう言うのが精一杯だった。
- 145 名前: Continuity (3) 投稿日: 03/01/31 21:05 ID:lJ3larcQ
- 「同性愛とは、制度的に排除された恋愛の形態に過ぎない」
そんな理論を一応読みかじっていた榊は、神楽の抱く感情を本人ほどに罪悪視しなかった。
だが、そんな理論を書く人達は大抵の場合、「自分もまたその制度に囚われている」と
用心深く注記するのが常でもあった。
榊には、親友の切実な思いから、そうした口上で簡単に逃げることはできなかった。
神楽の願望に自分は応えられるのだろうかと、真剣に自問自答し続けた。
そんな懊悩を引き受けるのも、神楽という人間自体は間違いなく愛しているからだった。
『榊、榊』笑ってそう呼びながら側に寄ってくる姿を、今でも昨日の事のように思い出せる。
――自分のような内向的で無愛想な人間を、ずっと慕い続けてくれた人。
少し強引な所もあったけど、友達として私の事を気遣ってくれていた。
私をライバルと呼んで、他の誰とも違う緊張感のある敬意を払ってくれてもいた。
無口な私と快活な神楽は、いつも対照的な組み合わせのように見られていたけれど、
あの人の根底にある生真面目さやひたむきさを私はよく知っている――。
榊は神楽と過ごした日々をひとつひとつ思い返しながら、対等な目線をもって
本音の付き合いをしてくれた神楽が自分にとっていかに重要な存在だったかを再認識し、
神楽への愛情と敬意を新たにした。
だが、いま神楽から求められている種類の「愛」の前には、
一つの大きな壁が立ちはだかっているのは言うまでもない事だった。
神楽の肉体を、欲望して抱けるかどうか――要するにそういう事だ。
榊は、神楽の男性的な魅力を努めて思い起こそうとした。開けっ広げでさっぱりした振舞い、
時折見せる凛とした表情、スポーツに熱中する時の真剣な目つき、そして輝く汗。
しかし一方、記憶から呼び起こされるその肢体は豊かな女性のそれで、榊を戸惑わせた。
だが――そのギャップにこそ、倒錯的なある種の危うさがあるのも事実なのだった。
それらを手がかりに、榊は神楽との交情を思い描こうともしてみた……。
- 146 名前: Continuity (4) 投稿日: 03/01/31 21:08 ID:lJ3larcQ
- 結局、この問題については実際に身体で確かめるしかないというのが榊の結論だった。
『……本当に、いいのか?』誘いの電話を受けて、神楽は言った。
「もちろん、結果がどうなるかは判らない」榊は答えた。
「でもたとえ駄目でも、君となら後悔はしないと思う……」
そして、もし無事に結ばれ得るのなら――最上の結末だと思う。神楽とならば。
約束した休日の昼下がり、榊はシャワーを浴びて神楽を待った。
しおらしい顔でやって来た神楽には、湿気を残す榊の髪の意味はすぐ判ったに違いなかったが、
そこに触れる事を避けるように当たりさわりのない雑談に努めた。
「マヤーも元気みたいだな。少し太ったんじゃないか?」
マヤーを抱き上げて屈託なく笑うその横顔を見つめ、愛せるかもしれないと榊は思った。
神楽の肩にそっと手を置いて、呼びかけた。「……神楽。もう、いいだろう」
神楽はマヤーを床に降ろし、榊の手に自分の手を重ねた。
「榊、お願いだ。何があっても、嫌いにはならないで……」
「ああ。約束するよ」
榊は下着姿でベッドに腰掛けて、神楽がシャワーを終えるのを待っていた。
いざ時を迎えれば、もはや何も考えられないものだった。
だが、こちらを丸い眼で見つめているマヤーが不意に気になった。
「ごめん、今は……」ドアを開けると、気持ちを知ってか、マヤーは自らベランダへ日光浴に出ていった。
マヤーを遠ざけたのは初めての事で、自分はこれから秘め事をするのだと榊は実感した。
ベッドに戻った時、頭の方にあるテーブルの上に、卒業旅行で撮った記念写真のスタンドがあるのに
気づいた。あどけない笑いを浮かべるみんなの中で、自分は神楽と並んで微笑んでいる。
浴室のドアが開く音が聞こえた時、榊はそのスタンドを伏せた。
バスタオルを巻いて緊張した面持ちの神楽が歩いてきた。「やっぱ、おまえスタイルいいよなあ……」
だが、そう言う神楽の鍛えられた太い脚が、榊には妙に艶めかしく映っていた。
神楽はベッドの枕元側に座った。そして、おもむろに手を伸ばしてスタンドを立て直した。
「私の中じゃ、続いてるんだ……」
そして、バスタオルをゆっくり下ろすと、榊の身体に腕を回しながら静かにベッドへ倒れ込んだ。
- 147 名前: Continuity (5) 投稿日: 03/01/31 21:10 ID:lJ3larcQ
- 狭いシングルベッドの上で、いやがおうにも二人の身体は密着した。
もとより他人との触れ合いに不慣れな榊は、その距離感に少し怯えた。
――だが思えば、孤独な自分の心にこうして強引に触りに来てくれた相手こそ、神楽だったではないか?
やがて、榊はおずおずと神楽の身体に腕をかけた。引き締まった肉の下から、温かい脈拍が伝わった。
ボディソープの甘い香りは、柔らかい乳房の肌触りを引き立てるかのようだった。
神楽の指が、榊のブラを外した。榊は焦りの声をあげた。「ちょっと待って…まだ…!」
だが直後、二人の乳房同士がすりつけられる感触、とりわけ肉の突起が押し当てられてくる刺激に、
榊の抗議もすぐ止んでしまった。自分以上に敏感に感じているらしい、神楽の表情に誘われた事もあって。
だからこそ、パンティを下ろされた時にはもはや、榊は衣服から解き放たれる快感にただ身を任せ、
そこへ指を差し込まれた時にすら、小さく息を呑むだけで受け入れたのだった。
「…あ、あのさ、榊…」神楽が、少し当惑した様子で言った。「一人でやるとき、どんなふうにしてるの」
榊は、恥じらいのため閉じていた目を開いて、驚きの声をあげた。「なっ、何を……!」
「こんなこと初めてだから、やり方わからなくて…でも、おまえが自分で感じる通りにやってみれば……」
見つめる神楽の瞳に湛えられているのは、どこまでも、榊のためを思う一途さだった。
そう、神楽はいつだって純情だった――。
神楽の深い想いに押されて、榊は目をそらし、頬を紅潮させてつぶやいた。
「……む、胸を…ずっと……揉みなが…ら……」
口にすると、湧き上がってくる羞恥心がぞくぞくと身体の底を走りめぐる。
そして榊がその感覚から逃れる間も与えず、神楽は胸と秘部への愛撫を始めてきた。
- 148 名前: Continuity (6) 投稿日: 03/01/31 21:11 ID:lJ3larcQ
- 「ん……あっ…!」ボリュームのある乳房を揉みしだき、搾り上げ、先端に指を沿わせるその手つきは
予想外に巧みで、榊はかすかな喘ぎを漏らした。「…な…何か、慣れてる感じだ……」
「…胸の大きさが同じぐらいだから…自分でやってるのが応用できるっていうか……」
そして、神楽はためらいがちに告白した。「……榊のこと思って…したこともあるんだ……」
だがその言葉にも、今の榊は汚らわしさより、いやらしい歓びを感じ取ってしまっていた。
秘部への指使いの方は決してそれ自体巧みではなかったが、胸への刺激に加えて、
他人の指、それも親友の指に犯されているという背徳感が、快感を倍加させていた。
やがて快感がじわじわと増大してきた時、その背徳感がまさって、榊は不意に恐怖した。
「あっ…ま、待って、神楽! まだ…怖いッ……!」
しかし神楽は聞き入れるどころか、残っていた片方の乳房を口で包み込んだ。
とろけるような粘り気を持つ舌が、榊にとっては未知の感触をもたらし、そのさらなる快楽の中では
背徳のおののきすらも、榊を昂ぶりの極点へ追いたてていった。
そうでなければ、神楽が秘部へ指をいっそう深く突き込んだ時、ぬるりと入ってくるその肉の棒を、
榊ははしたなく脚を開いて受け入れたりなどしなかったはずだ。
今や興奮は一つの波の極みに達しようとしており、それはもちろん本当の絶頂には及ばないにせよ、
榊の強固な理性を崩して悲鳴をあげさせるには十分だった。
「いやぁっ……もう…もぉ…神楽、だめっ……! あああぁッ!!」
のぼりつめた頂点で、耐えかねて頭をよじった時、あの記念写真を見てしまった。
――いけないところに、もう私たちは来てしまった――
ふと、そう気づいたとたん、榊の眼から涙がこぼれ落ちた。
- 149 名前: Continuity (7) 投稿日: 03/01/31 21:12 ID:lJ3larcQ
- 神楽の責めが止んだ。涙を見て心配になったらしい。「だ…大丈夫か、榊?」
「うん……何となく、ちょっと悲しくなっただけだ」波が引いていく中、榊は涙を拭いながら答えた。
神楽は、榊が見ていたものを察したようだった。
「……私の中では、おまえを好きな気持ちがそのまま大きくなって、ただ自然にこうなって……」
そして、榊に尋ねてきた。「だって、おまえも……気持ち、よかったんだろ?」
「うん……でも」榊は答えた。
「初めてだから、身体が触れ合う気持ちよさを、そのまま性感と勘違いしているのかもしれない。
男性との場合を知らないから、まだ判断できないって不安もあるんだ……」
「私だってそうかもしれないよ。でも…気持ちいいんなら、それで十分じゃないのか!?」神楽が言った。
「私は、他の相手との事なんて知る必要ない……。おまえと、最初で最後の相手同士になるんだったら」
その言葉が、どんな身体の快楽よりも榊の心を揺さぶった。
「神楽…そこまで、私を……?」
「愛してる」
思えば初めて言われたその言葉に、榊の中に残っていた最後の拒否感が崩れた。
だから、それから口づけを求めてきた神楽に、榊は何の迷いもなく唇を与えた。
そして神楽の唇を舌でなぞり、求められた以上の歓びを神楽に与え、
二人でずっと、互いの味をむさぼり合った。
「見送りは玄関でいいよ。なんか…恥ずかしいしさ」
神楽は余韻も冷めやらぬ、まだ浮わついた顔つきのままで帰っていった。
最後に笑って親指など立ててみせたさまは、まったく調子に乗った少年のように単純だ。
だが榊もまた、洗面台の前で乱れた髪を直しながら、
『この長い髪も好きだった』――そう囁いて撫でてくれた神楽の掌の感触を思い出し、
自分でも見た事のないほくそ笑みを眺めていた。
- 150 名前: Continuity (8) 投稿日: 03/01/31 21:14 ID:lJ3larcQ
- それから数カ月間の逢瀬を重ねた後、ある冬の夜に二人はホテルに赴き、血を流し合う儀式に臨んだ。
激しい苦痛の中、二人のこれからのためという言葉を繰り返し、榊と神楽は手を握り合って耐え抜いた。
翌朝には、一面の銀世界が二人の前に開けていた。
美しい門出の光景だと素朴に喜び合いはしたものの、しんしんと降り続ける雪の量はいまだに多くて、
帰り道には神楽の持っていた折りたたみ傘をささなければならなかった。
「友達からこんな事になっちまった奴なんて、滅多にいねえだろうな」
神楽はしみじみ語ったが、その歩き方は今なおこわごわしていて、格好がつかなかった。
「ああ、まだ痛え……。榊、大丈夫か?」
「……私も、まだ……」榊の足取りも同様だ。
「みっともねえ相合い傘だよな」神楽は苦い笑いを浮かべて自嘲した。「寒うぅ……早く帰りてえよ」
ふと榊は、傘を持つ神楽の腕が、自分の身長に合わせて不自然に高く上げられていることに気づいた。
「腕が辛いだろう。私が持つよ」言って、榊はコートのポケットに入れていた手を出した。
「いいって」神楽は言った。「…それだとおまえ、手が寒いだろ?」
次の瞬間、榊は、その手で神楽を強く引き寄せて抱きすくめた。
神楽は、榊の胸に顔の半分をうずめる形になって、恥ずかしげにつぶやいた。「……やめろよ」
「一緒に暮らそう」榊は言った。
傘が雪の上に落ちた。神楽も榊を抱き返したからだ。
髪に雪が降り積もっても、白い空の下で二人の時間は止まったままだった。
- 151 名前: Continuity (9) 投稿日: 03/01/31 21:22 ID:lJ3larcQ
- 「あん……あン…! ああンッ!!」
むせ返るような暑気に、充満する汗の匂い。神楽のたくましい腕にがっしりと拘束されて
逃げ場のない身体の芯へ、凶暴に突き上げ続ける快感。
「わ…私、わたし、またッ!! ああアアぁぁーッッ!!」
痙攣しながら数度目の絶頂を迎え、榊は叫びと共に最後のひと息まで吐き尽くした。
そしてその後ぐったりと覆い被さってくる神楽の体重も、汗の光沢も、首筋に張り付いた髪も、
全てを愛しく享受する。みんな、大好きな人のものだから。
しばらく乱れた息遣いだけが交錯する静寂が過ぎた後、神楽がゆっくりと身を起こした。
着けていた装具を外して置くと、前髪をかき上げ、白い歯を見せてひと笑いした。
「今日は私の完勝ってとこだな」
窓の向こうの終わりかけた夏の青空に、よく焼けた神楽の肌が映える。
その雄々しい誇りに満ちたワイルドな姿に、榊は恋人が心身ともに充実しきっている事を実感した。
――もうすぐ、結ばれてから1年が経つ。あの時から、この人はずいぶん強くなった。
スランプの中で私に甘えていた部分も、この夏の克己の後にはすっかり消え失せている。
それは私への忠誠心のためだったと、この人は語った。そんな力になれた事が、私は本当に嬉しい――。
まだ息を整えるのに苦心しながら、榊は口にした。「喉が…渇いたな……」
「取ってきてやるよ」神楽は立って、キッチンに向かっていった。
その白く焼け残ったヒップを眺めながら、榊は新たな情欲が頭をもたげてくるのを感じていた。
- 152 名前: Continuity (10) 投稿日: 03/01/31 21:24 ID:lJ3larcQ
- 神楽は麦茶のペットボトルを持って戻り、榊に与えた。榊は少し滴を垂らしながら、喉を鳴らして飲んだ。
「私にもくれ」神楽が言った。
榊はボトルを置くと、不意に神楽を襲って唇を奪い、舌を絡ませながら口内の麦茶を強引に注ぎ込んだ。
耐えきれなくなって身を離した神楽に、榊は容赦なく追いすがる。
「涼しくしてあげる……」よく冷えて潤った舌を、白い乳房の谷間に押し当て、
顎の下までゆっくり舐め上げてやると、神楽は甘い悶えの声をあげて布団の中に崩れ落ちた。
榊は置かれていた装具を手に取った。さっきまで恋人の中にあった側を、
たっぷり絡みついた恋人の体液と共に、自分の中へ咥え込む。
今やその思い入れだけで恍惚に震えてしまうほど、榊は神楽を愛し、求めていた。
「……何だよぉ……まだ、足りないの……?」神楽はうっとりと、女の表情でつぶやく。
こんな顔もまた、この人は素敵だ――。
「たっぷり愛してはもらったけど……」
自分の首から外したリボンで、神楽の手首を縛り合わせながら榊は言った。
「まだ、愛し足りない」
「…ばか……」神楽は首を傾けて媚態をつくり、濃い睫毛の下から物欲しそうな眼で榊を見つめた。
かつて私を開きに来てくれたこの人に、今は心も身体も全てを開いて。そして未来には、もっと、もっと。
そう。私たちは、満たし合うために出会ったのだから。
そして二人は名を呼び合い、また汗の海の中に融け合っていった。
(了)